1928年に M.ラヴェル(Maurice Ravel)がボレロという舞踏曲の形式を借りて作曲したモノです。
この曲には実に大雑把なストーリーがあります。
とあるしけた酒場で一人の客がボレロの旋律に合わせてひたすら情熱的に踊っている。
他の客も次第にのせられていき最後には皆が踊る、というものです。
実際、この曲には数々の振付けが成されています。
最初にこの曲を踊ったのは高名なダンサー、ルビンシュタイン(Ida Rubinstein)です。1928年11月22日にB.ニジンスキー(Bronislava Nijinsky, いわゆるNijinskyの妹)の振付けによります。
これはこの曲の初演でもありました。
その後1960年にはモーリス・ベジャール(Maurice Bejart)が女性ダンサーの為のバレエとして振付けをし、
1979年1月にはジョルジュ・ドンと男性ダンサーのためのバレエとして完成させています。
歴史はさておき、曲の構成を見てみることにします。
この曲には基本的に言って三つの要素しか在りません。
それはスネアドラム(響き線付の小太鼓)を基調とした二小節単位のリズムパターンと二つのメロディーです。
特にリズムパターンは一番最初から曲が終る三小節前まで延々と15分以上もの間途切れもせずに繰り返されることになります。
こんな単純な要素だけでどうやってこの曲は作られているのでしょう。
この曲はまず静寂の中からスネアドラム・ソロで始まります。
例のリズムパターンを二回繰り返すとフルート・ソロで第一のメロディーが静かで且つ情熱的に演奏されます。
そのメロディーが終ると今度はフルートがリズム隊に参加してしまいます。
その上に乗ってクラリネットが第一のメロディーをソロでもう一度奏でます。
それが終ると第二のメロディーがファゴットとクラリネットのソロで一度ずつ演奏されます。
実は、この曲の流れは全体的にこんな感じだったりします。
リズムだけの部分を挟みながら二回ずつ二つのメロディーが交互に繰り返される。
これが何と8回も繰り返されるのです。
この間に変化するのは演奏する楽器の構成と全体的な音の勢いだけなんです。
演奏に参加する楽器を次第に増やしながら音楽の勢いを次第に強めていくのです。
そして最後に全ての楽器によって二つのメロディーが一度ずつ演奏されます。
この時演奏される第二のメロディーは最後の部分がそれまでのものとは
違っていて、この曲のコーダ(終楽章)へとつながります。
そして曲はオーケストラの咆哮の末に雪崩込むようにして終ります。
要するに、この曲は単純なのです。 しかし、それは単調と言う意味では全くありません。 この曲の凄さは聴いてみなければわかりません。 しかし、聴けばわかります。 これは、そういう曲なのです。